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この記事では、書類スキャンの意義から、どのようにスキャンすると良いか、またスキャンをしてデジタルデータを保存する際に注意するポイントなどを広くまとめました。この記事の内容を頭に入れておくことで「書類をスキャンする」という具体的な作業だけでなく、その周辺で発生するやっておくべきことがわかり、安全にスキャンをすることができます。また、ご自身でスキャンする場合や業者に依頼するべき場合の切り分けなどもご理解いただけると思います。
書類を紙で保存するのではなく、スキャンしてデジタル化することで紛失を防げるだけでなく、必要な書類へのアクセスも容易になります。以下、書類スキャンの重要性について改めて確認していきましょう。
書類をデジタル化する理由として以下3つが挙げられます。
・紙の管理の難しさ
・デジタルデータの利便性
・データ共有の容易さ
書類を紙で保管する場合、保管場所が必要となります。書類が増えるにつれて書類を保管するスペースも拡大していかなければなりません。また保管の方法によっては書類が汚れてしまったり、そもそもどこにあるかわからなくなってしまった場合、その書類は紛失したことと同じことになってしまいます。
近年、個人情報保護法などをはじめとしたセキュリティ関連の法律でも管理方法について厳しい制約が設けられてきています。
紙で書類を保管しているとアクセスの際に1つずつ探す必要があります。しかし、書類をスキャンし、資料名や日付などを付けて保存することで検索することができ容易にアクセスできます。またデジタルデータは劣化しませんので、一度デジタル化してしまえば基本的には永遠に保存することができます。
さらにデジタルデータはコピーすることも容易です。
書類をスキャンしておくことで印刷したり、郵送したりせずに必要な書類を従業員間で共有できるようになります。また、データ共有のサービスを使えばリアルタイムでの確認も可能です。
ビジネスで活用する場合は、紙の書類の受け渡しコストや、共有のタイムラグを削減することができます。
デジタル化がもたらす価値として以下2つが挙げられます。
・データの安全性向上
・ワークフローの効率化
紙の書類はスペースが必要ということでしたが、逆に書類をスキャンしておくことで、パソコンやクラウド上で保存できます。デジタル化した場合に必要なのは、保存しておくパソコンのハードディスクか、近年ではクラウド上のスペースのみとなります。社内の書類を保管するスペースを縮小化できます。オフィスの賃貸は面積が大きければ高くなる傾向になるため家賃の節約にもつながります。
書類をスキャンをすることでビジネス文書や社外秘の書類など機密性が高い資料をフォルダーやファイルで管理できるようになります。書類ごとにアクセス権を付与すれば、対象の人以外の閲覧を防止できます。また、紙の書類のように紛失や置き忘れのリスクもありません。
書類をデータ化することで書類を探す必要がなくなり、リアルタイムで共有することができることで、コア業務に集中できます。書類が見つからないため業務が後まわしになるような事態も回避可能です。また、OCRを導入することで抽出した文字のデータを、文字情報として社内システムなどに入力できます。
デジタル書類の法的に押さえておきたいポイントとして以下3つが挙げられます。
・デジタル化による紙資料の保管期間
・電子署名の法的有効性
・プライバシーポリシーとコンプライアンス
経理関係を例にとると、紙の資料の資料については、法人、個人ともに保存期間は確定申告書の提出期限の翌日から7年間と定められています。なお、欠損金の繰越控除を受ける場合については最長で10年間保存しなければなりません。
一方で、デジタル化した場合、元が紙の書類の場合は紙の保存期間はおおむね1年以内が目安とこれまでは定められていました。しかし、2022年の改正において定期検査の要件が廃止され、正しく電子化できればすぐに破棄してよくなりました。
契約書等で紙を使わずにデジタル化することも可能な時代になってきました。紙を使わない契約書などで利用する、電子署名には法的有効性があります。
電子署名法2条上では以下の要件を満たす電磁的な署名として定められています。
●本人性を証明できる(本人の意思で署名したと証明できる)
●非改ざん性を証明できる(署名後に改ざんされていないことを証明できる)
電子文書では電子署名を付与することにより電子署名法3条にある真正性を証明可能です。
また、紙で締結した契約書をスキャンする場合も、2022年に改正された「電子帳簿保存法」では、特定の要件を満たせばスキャンした契約書があれば元の紙の契約書を破棄しても問題が無いということになっています。(詳細は弁護士等にご確認ください。)
企業は書類をスキャンしたらプライバシーポリシーとコンプライアンスを尊守しなければなりません。データの機密性や整合性、可用性を確保するためのポリシーの制定が必要です。紙の資料については目に見えて手に取ることができるためポリシーもわかりやすいですが、デジタル化した資料について専門的・システム的なルールが必要になってきます。ただし、コツを掴めばそれほど難しくはありません。
スキャンの基本プロセスは以下になります。
1. 書類の準備と前処理
2. スキャン設定の最適
3. スキャン後のデータ管理
スキャンする書類を選定し、フォルダやキングファイルから外したり、折れやしわを伸ばします。また、ホチキスがとまっている場合は外します。
書類は日付やタイトルごとに整理するのが一般的です。
書類について埃や塵などを取り除きます。刷毛、ブラシでブラッシングしたり、ケミカルスポンジでこすることで綺麗になります。OCR処理などでは汚れが入ることで正確に読み取りできない場合がありますので注意が必要です。
書類をデータで保存する場合、フォルダーやクラウドにはストレージがあるため容量を確認します。スキャン前にどのように整理して保存するかを決めておくと手戻りなく効率的にスキャンすることができます。
紙の書類はスキャナやスマートフォンを使用して電子化するのが一般的ですが、保存する際の品質や形式(ファイル拡張子)などは先に決定して設定しておきましょう。また、法的な書類の場合は、法律に則って正確にする必要があります。例えば、書類の種類にもよりますがA4サイズ388万画素、256階調以上でスキャンする、ファイルごとにタイムスタンプが必要、などの要件がある場合があります。これらの要件を満たせるようスキャン設定を最適化します。
書類をスキャンすると紙面で見るよりも色が薄くなったり、見にくくなったりすることもあります。解像度とカラーを設定し、記載内容がはっきりと保存されるようにしましょう。カラーについてはスキャナーによっても色味などが異なりますので、テストをしてみることが重要です。
スキャンエリアを設定しなかった場合、書類が切れてしまったり、不要な部分もスキャンされたりすることもあるので注意が必要です。スキャナーのメニューには左回転と 右回転などがあるため希望の向きに調整します。やり直しになってしまう場合の多くは、スキャンエリアのミスによるものです。
スキャンした書類を共有する場合などにファイル形式が重要になります。また、スキャンしたPDFデータはサイズ容量が大きいことがほとんどです。容量が大きいと転送や共有を行いにくくなります。高圧縮PDF機能やアウトラインPDF機能を使って縮小しましょう。
スキャン後のデータ管理として以下2つが挙げられます。
・データ命名と整理法
・バックアップストラテジー
前述のようにスキャンするメリットは必要なデータに検索してアクセスできるようになる点です。タイトルを見ただけで何の書類なのか分かるように命名しましょう。また、フォルダを年月やジャンルごとに分けるのがおすすめです。また保存するストレージやクラウド環境によりファイルに日本語名を使うと文字化けなどが起きる場合があります。先にテスト保存をしてみることをおすすめします。
電子での書類の管理にでは基本的に書類の紛失や劣化は起きませんが、注意するべきポイントもあります。例えば、保存していたクラウドのサービス終了に気づかずまるごとデジタルデータが消去されてしまう場合があります。またご自身のパソコンに保存した場合は、パソコンのハードディスクの故障などによってデータが紛失する可能性もあります。そういった場合に重要なのがバックアップです。デジタルデータのバックアップは設定やルールを作っておけば時間はかかりませんんおで、バックアップをとっておくようにしましょう。
ここでは、書類スキャンについて自分で行う場合と業者に依頼する場合のメリット・デメリットを確認していきましょう。
まずは自分でスキャンするメリットとデメリットを以下3つの観点から見ていきましょう。
・コストパフォーマンスの考察
・時間と労力の評価
・クオリティとセキュリティのコントロール
自分で書類をスキャンする場合、もちろん金銭面での負担はありません。そのため、書類のデータ化を最小限の初期投資費用で行いたい場合は自分で行うことになります。ただし、会社などであれば従業員の給与も発生しますので、どれだけ時間がかかるかを試算して外注したほうがお得であれば外注を考えましょう。
書類の量にもよりますが、スキャンには時間がかかります。会社であればコア業務の合間に作業を行うのは大変なことです。従業員を書類スキャン業務に充てることで、既存の業務がおろそかになることもありますし、スキャン作業は単純作業のためモチベーションが上がる仕事でもありません。そういったことを総合的に考えて外注の業者が使われることがあります。
業者に依頼することで鮮明な保存状態が担保される可能性が高くなります。ただし、重要な書類を業者に預けることになるため、信頼できる業者がどうか見極める必要があります。プライバシーポリシーなどを確認するようにしましょう。
業者に書類スキャンを依頼するメリットとデメリットとして以下3つが挙げられます。
・スキャン品質と専門的なスキル
・コストと信頼性
・プロジェクトのスケールとスピード
業者はスキャンのプロであり、専門的なスキルをもっていますし、スキャンの機器も高品質です。そのため、自分で行うよりも美しい仕上がりを期待できます。
業者に依頼するともちろん作業コストが発生します。また、自社や個人に関わる書類の場合、情報の管理を怠ったり、守秘義務に違反したりするような業者でないか見極めが必要です。契約時には機密保持契約書、業務委託契約書などの契約書を交わすようにしましょう。
スキャンする書類の量が膨大な場合、自分で行うと膨大な時間がかかることがあります。業者によって納品までの期間は異なりますが、業者に依頼した方が早く書類をスキャンし終えることができるケースも多くなります。
書類スキャンにおいて自分と業者のどちらを選ぶべきかの判断基準は以下3つです。
・プロジェクトのサイズと期間
・予算
・データセキュリティの要求レベル
小規模のプロジェクトで、かつスキャンする書類の量も少なければ自分で行ったほうが、発注にかける手間や時間よりも短くなる場合があります。書類が膨大な場合は、期日までに納品してもらえるかを確認した上で、業者に依頼した方がスムーズです。
業者に依頼するともちろん作業コストがかかるため、予算を考慮しながら検討する必要があります。まずは見積もりを取り、ご自身や社内での検討をすると良いでしょう。
社外に書類を持ち出し、かつ第三者の手にも渡るため、セキュリティレベルが高い書類については社内で行うということのほうが良い場合があります。ただしスキャン業者でも機密性の高い取り扱いができる業者もいますので、見積もりを取るとともにセキュリティに関する確認をしてみましょう。
ここでは、スキャンデータの保護と法規制の厳守について確認していきましょう。
データセキュリティ基本原則として以下3つが挙げられます。
・データの暗号化
・アクセスコントロール
・データリーク対策
データの暗号化とは不規則な文字列に元のデータや通信内容を変換することです。仮にスキャンしたデジタルデータに記載された個人情報が流出したとしても、データはランダムな文字列で表示されるため、第三者による解読や悪用を防止できます。
データやシステム、ネットワークなどのアクセス権限を使って、デジタル化した書類へのアクセスを制御できます。第三者による不当な操作や情報の読み書きを防げます。
データの流出について十分な対策をする必要があります。貧弱なインフラやパスワード漏れなどによって起こります。誤った設定や権限を付与しない、古いバージョンのソフトウェアを使用しない、推測可能なパスワードにしないなどの対策が必要です。
・各国・地域のデータ保護法
・データの保存と廃棄ポリシー
各国・地域にはそれぞれデータ保護法が制定されています。デジタルデータの保存方法については、2018年5月より施行されたEUのGDPRをチェックしておくことは重要です。。このデータ保護規則(GDPR)は保護の指針が参考になるとともに、EU以外の国でもEU在住のユーザーが利用するサービスには適用されるため、Webサイトやネットショップなどで海外のユーザーを対象としている場合に適用されます。また、直接GDPRの規制に関係せずとも日本国内の法律もGDPRの策定に関連して厳格化しているという流れがあります。
前述のようにデータを保存する際はセキュリティ管理をしっかりと行って保存します。また、廃棄の際にも注意が必要です。保存した情報をルールに則って廃棄し、担当者が定期的に廃棄の確認を行う必要があります。
リスクマネジメントとして以下2つが挙げられます。
・データ保護のリスク評価
・緊急時の対応(インシデントレスポンスプラン)
デジタルデータを保存する場合、可能な限り情報漏えいなどの対策をしていきますが、完全に回避できるわけではありません(もちろん紙の場合も同じです)。どこにリスクがあるかをチェックして、リスクに対処しておくことが必要です。例えば、データの損失のリスクについては前述のとおりバックアップが重要ですし、データの持ち出しによる漏洩についてはアクセスコントロールが重要になります。また、万が一、機密情報が漏洩した場合には対応した保険もありますので検討してみましょう。
これまで記載してきたポイントを押さえておけば、大きな事故は発生する確率は低いですが、万が一の場合のためにインシデント(事件・事故)が生じたときの対応方法を検討しておくことは重要です。誰が責任者なり、どのように対応するのか、また何から対処するのかを決めておくだけでも事故が発生した場合に冷静に対応することができます。